歯がグラグラする原因は?|歯周病と治療方法を歯医者が解説
歯がグラグラすると、
「このまま抜けてしまうのでは…」
「抜けてしまいそうで強く噛めない…」
と不安になるものです。
実は、歯が揺れる原因には 歯周病・噛み合わせ・外傷・加齢・全身疾患など、さまざまな要因があります。
そして、多くの場合は 早めに原因を特定して治療することで、進行を止めたり、歯を残せたりする可能性が十分にあります。
一方で、重度の歯周病で支えている骨が大きく失われると、最終的には歯を抜かないといけなくなり、その場合はブリッジや入れ歯、インプラントやオールオン4といった治療の選択肢が視野に入ります。
この記事では、歯がグラグラする原因から、放置した場合のリスク、治療法まで解説します。
「歯がグラグラ揺れて不安…」という方が、ご自身のお口の状態を理解して少しでも安心して頂ければ幸いです。
目次
1. 歯がグラグラする原因とは
歯がグラつく一番の原因は、歯周病ですが、噛み合わせの問題や外傷、加齢による変化、矯正治療を受けた後に噛み合わせが変化し、一部に負荷がかかって揺れが出るケースも見られます。
複数の要因が絡んで歯がグラグラするようになることもあります。

最も多い原因は「歯周病」
歯が揺れてしまう原因として最も多いのが、歯周病による骨の吸収(破壊)です。
歯は歯茎だけで支えられているわけではなく、歯槽骨(しそうこつ)という骨がしっかりと歯を支えています。
しかし歯周病が進むと、
歯ぐきの腫れ・出血
歯周ポケットの形成
歯槽骨が溶けていく
といった変化が起こり、歯を支える力が徐々に弱まっていきます。
その結果、「噛むと歯が揺れる」「指で触ると動く」といった症状が現れてきます。
※歯周病は痛みなく静かに進行するため、自覚症状が出た時には中等度~重度まで進んでいることも珍しくありません。
噛み合わせのバランスが崩れている場合
歯ぎしり・食いしばりが強い方、噛み合わせが偏っている方は、一部の歯だけに過度の力がかかり、グラつきを起こすことがあります。
・寝ている間の強い食いしばり
・片側だけで噛むクセ
・被せ物や詰め物の高さが合っていない
・歯が抜けたまま放置して噛み合わせが崩れた
こういった状況が続くと、歯周病がなくても歯の支えが弱り、動揺が出る場合があります。
外傷(ぶつけた・転倒した)によるぐらつき
転倒やスポーツ時の衝撃などによって、歯を支える組織がダメージを受けると、歯が揺れることがあります。
軽度のものから、根の部分にヒビが入っている重度のものまで幅広く、早期の診察が必要です。
加齢や全身疾患の影響
年齢を重ねると、
・歯ぐきの退縮
・骨密度の低下
・唾液の減少
などの変化が起こり、歯が揺れやすくなることがあります。
また、
・糖尿病
・喫煙
・強いストレス
・免疫低下
・ホルモンバランスの変化(妊娠・更年期など)
も歯周病を悪化させ、結果として歯の動揺につながるリスクが高まります。
どの原因でも「早期対応」がカギ
このように歯が動く原因はひとつではなく、早期に原因を特定することで重症化を防げるケースも少なくありません。
歯がグラグラしている状態は、身体からのサインであり、自然に元通りになることはほとんどありません。
小さな違和感のうちに受診できれば、歯を残せる確率は大幅に上がります。
2. 歯周病の進行とその影響
歯がグラグラする原因の多くを占めるのが歯周病です。
歯周病は、歯ぐきだけの病気ではなく 歯を支える骨(歯槽骨)が少しずつ溶けていく病気 で、進行するほど歯の揺れが大きくなります。
ここでは、歯周病がどのように進行し、どんな影響を及ぼすのかを段階ごとに解説します。

歯周病の進行段階と症状
① 歯肉炎(軽度)
・歯ぐきが赤く腫れる
・歯磨きで出血しやすい
・痛みはほとんどない
この段階では骨はまだ溶けていないため、適切なケアで改善しやすい状態です。
② 中等度歯周炎
・歯周ポケットが深くなる
・歯ぐきが下がってくる
・歯を支える骨が少しずつ吸収される
・冷たいものがしみる
・歯がわずかに揺れ始める
この時点で「グラつき」を感じる方が増えます。
③ 重度歯周炎
・歯槽骨が大きく失われる
・膿が出ることがある
・強い口臭
・噛むと痛い
・歯が大きく揺れ、機能しない
ここまで進むと、保存が難しく抜歯になる可能性が高くなります。
歯周病が引き起こす全身への影響
近年、歯周病は口の中だけでなく 全身の病気とも深く関わる ことが明らかになっています。
糖尿病の悪化
→ 炎症が血糖コントロールに悪影響
心筋梗塞・脳梗塞リスクの上昇
→ 菌が血管に入り、動脈硬化を促進
早産のリスク増加(妊娠中)
誤嚥性肺炎
→ 高齢者で特に問題に
歯周病を治すことは、全身の健康を守ることにも直結します。
定期的な歯科検診が重要な理由
歯周病は 静かに進行する病気 で、痛みが出た頃にはすでにかなり進んでいるケースが多くあります。
定期検診を受けることで、
・歯周病の早期発見
・プロによるクリーニング
・進行リスクの把握
・噛み合わせのチェック
が可能になり、歯を失うリスクを大きく減らすことができます。
特に歯がグラグラし始めたら、放置は禁物です。
3. 歯がグラグラすることのリスク
歯がグラついている状態をそのままにしておくと、症状は自然に改善するどころか、さらに悪化して歯を失う原因になることがあります。
ここでは、歯がグラグラすることで生じる具体的なリスクを解説します。

歯周病の進行が加速する
グラグラしている歯は、噛むたびに揺れ、周囲の歯周組織に負担がかかります。
この状態が続くと、
・歯周病菌が増殖しやすい
・歯槽骨の吸収がさらに進む
・歯ぐきの炎症が広がる
など、歯周病の進行スピードが一気に早くなることがあります。
抜歯の可能性が高まる
歯が大きく揺れている場合は、歯を支える骨が大きく失われていることが多く、以下の理由で抜歯になるケースがあります。
・骨の量が少なく、歯を固定できない
・歯根にヒビ・破折が見られる
・噛むたびに痛みが出る
・日常生活に支障が出ている
特に重度の歯周病では、抜歯以外の選択肢が残されていない場合もあります。
周囲の歯にも悪影響が及ぶ
1本の歯がグラグラすると、噛み合わせが崩れ、隣の歯にも過剰な力がかかるようになります。
・周囲の歯の動揺
・歯根破折
・連鎖的な歯周病の悪化
など、ドミノ倒しのように複数の歯が悪くなることがあるため、早めの対応が欠かせません。
噛む力の低下や食事への支障
歯が揺れていると、
・硬いものが噛めない
・違和感で噛みにくい
・食事が偏る
など、日常生活にも影響が出始めます。
噛む力が落ちると、消化機能の低下や栄養不足につながることもあり、健康全体に影響を及ぼす可能性があります。
見た目・口臭などのトラブル
歯周病が進むと、
・強い口臭
・歯ぐきの腫れ
・歯の隙間が広がる
・時に膿が出ることも
など、見た目や対人関係に影響する症状が現れることもあります。
特に口臭は本人が気づきにくく、大きなストレスの原因になることもあります。
4. 歯がグラグラするときの治療方法
歯がグラグラしている場合、原因と進行度によって対応が大きく変わります。
「できる限り歯を残す治療」から、「残せない場合の抜歯とその後の治療」まで、順を追って解説します。

①歯周病治療(歯を残せる可能性がある場合)
歯周病が原因で歯が揺れている場合、歯周病治療によって進行を抑え、歯のグラつきが改善することがあります。
主な治療内容
・スケーリング(歯石取り)
歯周病の原因となる歯石・汚れを機械で丁寧に除去します。
・ルートプレーニング
歯周ポケットの奥深くに付着した汚れや細菌を取り除き、歯根の表面を滑らかに整えます。
・歯周外科治療
中等度〜重度歯周病では、目に見えない深いポケットの汚れを直接取り除く手術を行う場合があります。
・再生療法(必要なケースのみ)
歯周病で失われた骨や歯ぐきの組織を再生させるための治療です。
特殊な再生材料(膜や骨補填材、エムドゲインなど)を使用し、歯を支える組織の回復を目指します。
すべての症例に適応できるわけではありませんが、条件が合えば歯を残せる可能性が広がります。
・噛み合わせの調整
歯ぎしり・食いしばり・噛み合わせのズレがある場合、力の集中を減らすことで揺れの悪化を防ぎます。
・ナイトガード(マウスピース)
寝ている間の食いしばりから歯を守ります。
②歯を残すことが難しい場合は「抜歯」
歯槽骨の吸収が大きい、歯が大きく揺れている、痛みがある場合などは、残念ながら歯を残すことが難しく、抜歯が必要になることがあります。
抜歯が必要になる主なケース
・歯周病が重度で骨がほとんど残っていない
・歯が根元から大きく揺れている
・歯根破折(歯の根が割れている)
・噛むと強く痛む
・周囲の歯に悪影響が出ている
抜歯は決して後ろ向きな選択ではなく、口腔内全体の健康を守るための重要な判断です。
③ 抜歯後の治療計画がとても大事
歯を抜いた後、どのように噛む機能を回復させるかが大きなポイントです。
選択肢としては、
・ブリッジ
・入れ歯
・インプラント
・全体治療(オールオン4 など)
などがありますが、どれが最適かは、残っている歯の状態・骨の量・患者様の希望によって大きく変わります。
特に「歯がグラグラの歯が複数ある・重度歯周病が全体に広がっている」ケースでは、部分治療を繰り返すより全体治療のほうが根本解決になる場合もあります。
5. オールオン4という選択肢
当院では、歯がグラグラする状態で来院される患者さんをこれまで数多く診てきました。
その多くは、一部だけが悪くなっているのではなく、歯周病が口全体に広がっていたり、虫歯が複数進行していたりするケースです。
こうした場合、1本ずつ部分的に治療を繰り返しても根本的な改善につながらず、再発や別の歯の悪化を招きやすくなります。
そのため、全体を一度に整える「全顎治療」が適している患者さんが非常に多いというのが実情です。
こうした全顎治療の選択肢として代表的なのが「オールオン4」です。

オールオン4とは?
オールオン4は、4~6本のインプラントで上または下の歯列全体を支える全顎治療です。
従来のように10本以上のインプラントを必要とせず、少ない本数でしっかり固定できるため、重度の歯周病や骨が少ない方でも対応できるケースが多いのが特徴です。
歯がグラグラしている方に向いている理由
① 仮歯が当日に入り、すぐ噛める生活に近づく
抜歯 → インプラント埋入 → その日に固定式の仮歯
という流れで進むため、治療当日から見た目と噛む機能が大きく改善します。
② 歯周病による「負の連鎖」を断ち切れる
グラグラの歯を残しながら局所的に治すと、別の歯が次に悪くなることがあります。
オールオン4は全ての歯を抜歯しますので、一時的に歯周病菌を一掃することができます。
全体治療にすることで、「治しては悪化」を繰り返すストレスから解放される方が多いです。
③ 入れ歯が合わない方でも快適
総入れ歯のように外れる心配がなく、しっかり固定されるため、
・噛む力
・発音のしやすさ
・見た目の自然さ
・日常の快適さ
が大きく向上します。
骨が少ない方でもできる場合があります
重度歯周病の方は骨が大きく失われています。
そのため、インプラントをするにも骨の量が不足しているという理由で「インプラントはできない」と歯医者さんで言われたことがある人は少なくありません。
GDHインプラントオフィス札幌では、そうした患者様でも角度を工夫して埋めることで、多くのケースで骨移植なしで治療が可能です。
さらに、ザイゴマインプラント(頬骨に固定する特殊インプラント)などを組み合わせることで、他のクリニックで断られたような、難しい方にも対応できます。
オールオン4は「歯がグラグラの状態を根本から改善したい方」に適した治療
・何本も歯が揺れている
・どの歯も悪く、どれから治せばいいかわからない
・入れ歯では満足できない
・長く噛める環境をつくりたい
・見た目もきれいに整えたい
こうした悩みを抱える方にとって、オールオン4は現実的かつ効果的な選択肢になります。
6. 治療が終わった後のメインテナンスが大切
歯周病は、歯垢(プラーク)や歯石の中にいる細菌が原因で進行します。
そのため、ホームケアとプロケアによる予防ケアで、細菌を減らし続けることが、歯周病の再発防止に最も重要です。

【ホームケア】自分でできる日々の予防
・正しいブラッシング
・デンタルフロス・歯間ブラシの併用
・食生活・生活習慣の見直し(喫煙や睡眠不足も影響)
毎日のケアで歯垢をしっかり落とすことが、歯周病を防ぐ土台になります。
【プロケア】定期的なクリーニングで徹底ケア
歯科医院で行うプロフェッショナルケアでは、
・歯石除去
・バイオフィルムの徹底除去
・噛み合わせの確認
・歯周ポケットの状態チェック
など、歯周病予防のプロである歯科衛生士がホームケアでは取りきれない汚れや細菌を除去できます。
歯周病治療後は、3ヶ月に1回程度の定期メインテナンスが推奨されるケースが多く、これが歯周病の再発防止と長期的な口腔健康の維持に直結します。
7. 治療のタイミングを逃さないことが大切
歯周病が原因で歯がグラグラしている場合、時間が経つほど歯を支える骨が失われていき、治療の難易度が高くなってしまいます。
特にインプラント治療は骨に埋める必要があるため、骨が少なくなる前の対応がとても重要です。
「少し揺れている気がする…」と感じた段階で早めに歯科医院を受診することで、治療の選択肢を広げ、より良い治療計画を立てることができます。
気になる症状がある方は、ぜひ早めに歯科医へご相談ください。


