札幌にお住まいの70代女性のオールオン4クワッドザイゴマインプラントの症例
札幌市の白石区にお住まいの70代女性の上下オールオン4の症例をご紹介します。
こちらの患者様はインプラント手術のなかでも最も高難度の技術が必要となる上顎のインプラントを4本全て頬骨(ザイゴマ)に埋入する術式「オールオン4クワッドザイゴマインプラント」で行いました。
通常、インプラントは顎の歯槽骨に埋入しますが、頬の骨(ザイゴマ)に埋入するのがザイゴマインプラントと呼ばれます。オールオン4は基本的に4本のインプラントを埋入しますが、骨の状態次第では4本を歯槽骨に埋入して、追加でザイゴマにインプラントを埋入するという方もいらっしゃいます。
上顎のインプラント4本すべてザイゴマに埋入するのが「クワッドザイゴマインプラント」です。
札幌だけでなく、北海道でこの術式を対応している歯科医院はGDHインプラントオフィス札幌だけですのでとても珍しい症例です。
ここでは、症例の紹介とともにクワッドザイゴマインプラントのメリットについてもご紹介したいと思います。
30年以上入れ歯を使っていた…
当院に初めて来院された時の患者様の年齢は70代後半でした。40代の頃から入れ歯を使用されてきたようなので、30年以上、入れ歯生活でした。
3〜4年くらい前から、入れ歯がゆるくなって落ちてくるようになり、不満や煩わしさが増えていったようです。
顔貌が変わったり、合わない入れ歯のため会話がしにくかったり。
特に、下顎の前歯に歯根(歯の根っこ)が残っているのですが、そこに入れ歯があたって痛いのをなんとかして欲しいというご要望でした。
診査診断
下顎の前歯の根っこだけが残っている状態で、上顎、下顎ともに骨が萎縮している状態でした。
大きな入れ歯を装着していたため発音がしにくく、会話をするのが億劫だったようです。
入れ歯を長く使用していたため、骨が萎縮している
歯を失うと、その部分の骨はどんどん痩せていってしまいます。失った歯の部分に人工歯根であるインプラントを埋入することしか、骨を痩せることを防ぐことはできません。
入れ歯は歯茎の上に乗っていますので、入れ歯で噛むたびに歯茎に力が加わることになり、骨が萎縮するスピードも早くなります。
30年以上入れ歯を使用していたため、上下とも骨が非常に萎縮してしまっていました。
下顎の状態
患者様が入れ歯が当たって痛いと言っていた下顎の前歯に残っている歯根。
歯がない奥歯の歯茎が痩せているのがお分かりでしょうか?
このように入れ歯を長く使用していると、どんどん顎の骨は萎縮していき、歯茎は痩せ細くなっていきます。
特に下顎はこのような状態になると入れ歯を維持、安定させるのが非常に難しくなり、「入れ歯が当たって痛い」という原因になってしまいます。
上顎は口蓋を全て覆うことができるのですが、下顎は舌(ベロ)があるため、上顎よりも入れ歯を維持するのが非常に難しいです。
年々痩せていくので、年々入れ歯が合わなくなっていくという悪循環になっていきます。
そのため、こちらの患者様のように歯根などをできる限り残して入れ歯を維持させるために利用するという考えもありますが、残っている歯への負担も大きくなってしまいますので、痛くなったり、いつかは抜かないといけなくなってしまいます。
治療計画
下顎の治療計画
下顎は通常のオールオン4を行うことになりました。残っている前歯の歯根の抜歯、4本のインプラントを埋入、仮歯の固定までを1日で行います。
上顎の治療計画
長年入れ歯を使用していたため、上顎の骨が非常に萎縮しており、通常の歯槽骨へのインプラントの埋入は困難な状態です。
通常だとこのような位置にインプラントを埋入したいが、骨がないため不可能。
上のように通常の位置と角度でインプラントを埋入するには骨が不足しているため、骨移植が必要となります。
骨移植を行う場合、まずは骨移植の手術を行い、6ヶ月はこれまで通り入れ歯を使用して頂きます。その後、骨が出来上がっていればインプラントを埋入して、また6ヶ月経ってから最終的な上部構造を装着するため、治療期間も1年以上かかり、手術も2回行わなければなりません。
しかし、骨移植を行えば、インプラントを埋入するのに十分な骨が作れるとも限りません。こちらの患者様のように非常に骨が薄ければ、それだけ造成する骨も必要となります。
頬骨にインプラントを埋入する治療計画
患者様への負担、要望を考慮した結果、上顎は4本のインプラントを全て頬骨に埋入するクワッドザイゴマインプラントを行うことになりました。
この方法であれば、骨移植の必要もないため、インプラントを埋入したその日のうちに仮歯を固定できるため、1回の手術だけですみ、その1日で入れ歯を使わずに生活をして頂けます。治療期間も6ヶ月で完了します。
もちろん、全ての手術に100%という言葉はありません。ザイゴマインプラントにも周到な準備が必要となります。
CTによるザイゴマインプラントの埋入計画
上顎4本のザイゴマインプラントの埋入計画を立てます。
上顎右側の後方にはノーベルバイオケア社製のNobel Zygoma 45mmを埋入
上顎右側の前方にはノーベルバイオケア社製のNobel Zygoma 47.5mmを埋入
上顎左側の前方にはノーベルバイオケア社製のNobel Zygoma 47.5mmを埋入
上顎左側の後方にはノーベルバイオケア社製のNobel Zygoma 42.5mmを埋入
ザイゴマインプラントは通常のインプラントよりも4〜5倍もの長さのため、埋入角度が一度ズレるだけで、到達点が大きくズレてしまいます。
少しのズレも許されませんので、世界最高峰の高精度CTを使用して埋入計画を立てます。
光造形による埋入シミュレーション
患者様のCTデータをもとに、上顎の光造形(樹脂製の3Dモデル)を製作し、インプラント手術のシミュレーションを実際に行います。
患者様のCTデータをもとに3Dプリンターで製作した上顎の光造形(樹脂製の3Dモデル)
どれだけ経験豊富だとしても、実際に光造形で埋入のシミュレーションを行うなど事前準備に時間をかけます。
手術前の検査
治療計画が決まった後は、その治療計画に向けての最終的な検査や準備を行っていきます。
患者様も70歳を超えて高齢のため、全身の健康状態の管理はとても重要です。当院でも血液検査を行い、糖尿病で通院をされていましたので、かかりつけ医とも連携しました。
糖尿病のかたでも、HbA1cが基準値を超えず、安定していれば問題なくインプラント手術を受けることができます。
こちらの患者様も数値が安定しており、血液検査の結果からも他に特に問題はなかったため、計画通りインプラント手術を行っていくことになりました。
インプラント手術当日
インプラント埋入手術
上下ともに同じ日に手術を行い、計画通り上顎に4本、下顎に4本のインプラントを埋入しました。
手術はIVS(静脈内鎮静法)のもと行ったため、患者様はうたた寝状態でリラックスして手術を受けられました。
上顎のザイゴマインプラントもシミュレーションどおりに埋入することができました。
仮歯の固定
上下ともにインプラント埋入後、十分な初期固定が得られたため、計画通り仮歯(プロビジョナルレストレーション)をインプラントに固定していきます。
手術当日に仮歯が固定されるので、患者様のお悩みだった入れ歯が外れて話しにくかったり、ズレて痛いといった心配がありません。
最終補綴物(上部構造)の装着
インプラント埋入手術から6ヶ月後、上顎、下顎のインプラントにアクリリックレジンの上部構造を装着して完成しました。
「もう年だから…」と仰るかたへ
「もう年だから…」と仰るかたも、思いきり食事や会話を楽しんでいる姿を想像してみてください。
こちらの患者様は70代でインプラント手術を行いましたが、たった1日で入れ歯の煩わしさから解放されました。
長年入れ歯を使用されているかた、70代、80代のかたでも安心してインプラント手術を受けられる環境をご用意しています。
50代、60代とまだまだお若いかたは、骨があるうちに、元気なうちにインプラント手術を受けることで、身体的にも費用的にも後々受けるよりも負担が軽減されます。
食事や会話を楽しめる時間が長いほうが、友人や家族と過ごす時間も楽しくなります。
今抱えているお口のお悩みから、将来的な不安まで、あなたに最適な治療計画をご提案させて頂きますので、お気軽にぜひご相談くださいませ。
※インプラントは保険適応外です。
※治療後の口腔管理が不適切な場合、埋入したインプラント周囲に感染・炎症を起こし、脱落する可能性があります。