
マウスピース矯正(インビザライン)の症例紹介
気になる歯のガタガタがマウスピース型矯正装置(インビザライン)で改善されました


治療内容 | マウスピース型矯正装置(インビザライン)による全体矯正 プラン:コンプリヘンシブ |
期間 | 42ヶ月 |
料金 | 880,000円(税込) |
抜歯 | 非抜歯 |
副作用・リスク | 歯根吸収、歯肉退縮、知覚過敏が起こることがあります |
マウスピース矯正(インビザライン)による治療は健康保険適用外の自由診療となります。
実際の治療の流れ
マウスピース矯正(インビザライン)で歯並びを改善した治療の過程をご紹介します。
長年歯並びに悩まれていて、歯列矯正を受けようか悩まれていた患者さま。札幌で矯正治療を行なっている歯科医院が多くあるなか、GDHインプラントオフィス札幌を選んでくださりました。
患者さまのご要望は、「前歯の反対咬合と下顎の内に倒れているのを改善したい」というものでした。
初診来院時のお口の状態です。


歯並びがガタガタしており、正常な歯並びは上の前歯のほうが下の前歯よりも前にある状態なのですが、前後ろが反対になっているいわゆる反対咬合になっています。
また、下の奥歯が内側に倒れている状態でした。

反対咬合の原因
反対咬合の原因は一つではありません。
- 上の歯が後方に位置している(上顎前歯の劣成長)
- 下の歯が前方に飛び出している(下顎前歯の突出)
- 顎の骨格そのものが前後にずれている(骨格性の問題)
このように反対咬合といっても、原因はさまざまです。
「歯が原因なのか」「骨格が原因なのか」 によって、治療計画は大きく変わってきます。
一見すると「受け口(反対咬合)だな」と分かっても、見た目や口腔内写真だけでは正確な原因は特定できません。
写真や鏡で見えるのは歯並びの表面的な部分であり、顎の骨格の位置や歯の傾斜角度までは判断できないからです。
セファロ分析の必要性
そこで、GDHインプラントオフィス札幌では 「セファロ(頭部X線規格写真)」 という特別なレントゲン写真を用いて分析を行います。
- 骨格の前後関係
- 上下顎の位置関係
- 歯の傾斜や角度
これらを数値で正確に把握することで、どの部分に原因があるのかを明確に診断できます。

セファロ分析の結果、この患者様の反対咬合は 骨格性の問題 であることがわかりました。
つまり「歯の位置」だけの問題ではなく、顎の骨格そのものの前後関係に不調和がある状態です。
- スケルタルパターン:骨格性III級
- フェイシャルパターン:メジオ
その他にもセファロ分析では、歯や骨格の位置だけでなく、噛み合わせの角度(咬合平面)や高さ(咬合高径)もチェックします。これにより、見た目のバランスだけでなく、しっかり噛める機能的な噛み合わせをつくることができます。
今回は下顎そのものが前方に位置しているため、下の歯だけを無理に後ろに動かすと、歯を支える顎の骨からはみ出して、将来的に歯を失うリスクが高まります。
そのため、骨格に合わせて上下の歯をバランスよく動かしていく必要があります。
綺麗な見た目の定義とは?
歯並びの美しさは、ただ歯がまっすぐ並んでいるかどうかだけで決まるものではありません。
審美的に「綺麗」とされる見た目には、いくつかの大切な基準があります。
ここでは代表的な2つの審美基準を紹介します。
正中(せいちゅう)
正中とは、顔の真ん中のラインと、上下の前歯の真ん中が一致している状態のことです。

このように正中が大きくズレてしまっていますが、これを改善してあげることで、笑顔がぐっと綺麗に見えます。
マージンライン
マージンラインとは、前歯の歯ぐきの高さのラインを指します。
歯ぐきの高さが左右で揃っていると、笑ったときに歯が美しく見えます。
逆に不揃いだと、たとえ歯並びが綺麗だとしても、歯並びまでガタガタに見えてしまいます。

このように歯茎の高さのラインがバラバラで左右非対称になっています。
歯周病などで歯肉そのものが下がってしまった場合(歯肉退縮)は、矯正治療だけで元の位置に戻すことはできませんが、こちらのかたの場合は、歯の位置や角度の不正によって乱れていることが原因のため、歯列矯正をすることで、自然と歯ぐきのラインも綺麗になります。
矯正治療以外の治療
矯正治療と並行して、過去の治療痕や補綴物(被せ物・詰め物)についても見直しを行いました。
これは、見た目の改善だけでなく、長期的に歯を守るために重要な診断です。
過去の虫歯治療(CR)の着色
過去の虫歯治療で行ったコンポジットレジン(CR)修復に着色がみられました。
審美性の回復のために、古いCRを一度除去し、最新のダイレクトボンディングで再修復を行いました。

第一大臼歯の補綴物の見直し

- 左下第一大臼歯:メタルコア+フルメタルクラウン(FMC)
- 左上第一大臼歯:メタルインレー
第一大臼歯(前歯から数えて「6番」にある歯)は、奥歯の中でも咬合の中心となる非常に重要な歯です。
この部位は噛む力のリスクが最も大きく、歯を失いやすい部位の第一位でもあります。
GDHインプラントオフィス札幌はインプラント治療を数多く行っているため、この6番目の歯を失い、それをきっかけにドミノ倒しのように歯がダメになっていってしまう患者さまをたくさん見てきました。
そのため、
- 審美面(金属色が目立つ問題の改善)
- 力学的リスク(強い咬合力に耐えられる素材選択)
を考慮し、ジルコニアでの修復に変更しました。これによって審美性と強度の両立が可能で、長期的に安定した予後が期待できます。
矯正治療の事前シミュレーション
マウスピース矯正(インビザライン) では、治療を始める前に専用のシステムを用いて、
- どの歯を
- どのタイミングで
- どの方向に
動かしていくのかを詳細にシミュレーションすることが可能です。
実際のシミュレーションの映像です。青色が最初の歯の位置でそこから歯が動いていくシミュレーションが確認できます。
シミュレーションと実際の治療の違い
ただし、シミュレーションはあくまで理想条件での予測に過ぎません。
実際の治療では、歯や骨の反応、日常生活でのマウスピース装着時間などにより、必ずしもシミュレーション通りに歯が動くわけではないことがあります。
今回の患者さまの場合も、診断時に「シミュレーションどおりには動かない可能性が高い」と判断しました。
そのため、あらかじめ途中で計画の修正が必要になる場合や追加の治療(アライナーの再製作など)が必要になる場合があるといったリスクをお伝えしました。
マウスピース矯正は患者さまの協力が大前提となりますので、患者さまに安心して治療に臨んでいただけるようにしています。
矯正治療スタート

いよいよ マウスピース矯正(インビザライン) の開始です。
歯にポッチのようなものが付いていたり、歯と歯の間に隙間がありますが、最初のステップとして以下の処置を行いました。
IPR(歯と歯の間をわずかに削る処置)
歯を効率的かつ安全に動かすために、必要に応じて歯と歯の間を0.1〜0.3mm程度研磨します。
- 歯を抜かずにスペースを確保できる
- 歯列全体の調和を取りやすくなる
- 歯の健康や寿命に影響が出ない範囲で行う
アタッチメントの装着
マウスピースの力を正しく歯に伝えるために、歯の表面に小さな突起(アタッチメント)をレジンで装着します。
- 透明で目立ちにくい
- 効率的に歯を動かせる
- 治療後に除去可能
「アタッチメントは目立つのでは?」と気になる方もいらっしゃいます。
当院では、事前のシミュレーションで アタッチメントをつけない場合、治療にどれくらい影響が出るか を確認することができます。
- アタッチメントあり → より効率的に動かせる
- アタッチメントなし → 見た目には有利だが、治療期間が延びたり仕上がりに制限が出る可能性
患者さまのご希望と治療精度のバランスを考慮し、最適なプランをご提案します。
矯正開始から6ヶ月経過

マウスピース矯正(インビザライン)を開始してから6か月が経過しました。
治療前は後方に下がっていた前歯が、少しずつ前に移動してきて、歯列のアーチが整ってきました。
これからは上の前歯が下の前歯を越えるように動かしていき、見た目も噛み合わせもさらに良くなっていきます。
矯正開始から10ヶ月経過

マウスピース矯正(インビザライン)を開始して10か月が経過しました。
全体的には順調に歯は動いてきましたが、一部の歯の動きが予定どおりに進まない箇所が出てきました。
顎間ゴムの使用
こうした場合には、顎間ゴムと呼ばれる、上下のマウスピースに小さなゴムをかけて「引っ張る力」を補助することで、しっかりと歯を動かしていきます。
顎間ゴムを使うと治療の精度がさらに高まります。

ゴムをかけるために歯にボタン(ポッチ)をつけます。

ゴムをボタンにかけて歯を引っ張ります。
顎間ゴムは、ご自分でつけたり外したりしていただきます。ゴムをかける時間が長いほど治療がスムーズに進むので、ご協力いただくことがとても大切です。

こちらの患者さまは協力してくださったため無事に歯が動いてくれました。
しっかりと動いたらボタンを外して再びマウスピースだけで歯を動かしていきます。
1年6ヶ月経過しましたが見た目はかなり改善されてきてるのがわかります。
矯正開始から30ヶ月経過

治療開始から30か月が経過し、歯列はほとんど理想的な形に整いました。
見た目も大きく改善し、咬合のバランスも良好になってきています。
ただし、右側の噛み合わせにわずかな不調和が残っていました。
上下の歯の位置関係が理想的ではなく、このままでは長期的に奥歯や顎関節に負担がかかるリスクがあります。
最後の仕上げとして、再び 顎間ゴムを使用して、上下の歯のバランスをしっかり合わせていきます。

見た目だけでなく噛み合わせもしっかりと整いました。
矯正治療完了
最後に少し微調整を行い、歯並びを整えたあと、金属の被せ物も白いジルコニアに交換しました。見た目も噛み合わせも自然になり、安心して長く自分の歯を守れる口元が完成しました。



今回は歯の移動量が非常に大きかったため、治療期間は長くなりました。
それでも患者さまがしっかりとご協力くださったおかげで、審美的にも機能的にもご満足いただける結果を得ることができました。
私たちにとっても、患者さまの笑顔と「やってよかった」というお言葉が何よりの喜びです。
長期間にわたる治療、本当にお疲れさまでした。

