上顎の骨が大きく痩せてしまい、「インプラントはできないと言われた」「入れ歯しか選択肢がないと言われた」という方の中には、ザイゴマインプラントという治療法をご存じない方も多くいます。

ザイゴマインプラントは、頬骨（Zygoma）を利用する特殊なインプラント技術で、骨が少ない難症例でも治療できる可能性があり、骨移植を行わずに即日で固定式の歯を装着できるケースもある先進的な方法です。

しかし、この治療は高度な技術を必要とするため、「どの医師に任せるか」が治療結果を大きく左右します。

本記事では、ザイゴマインプラントの基本から、メリット・デメリット、そして名医を選ぶための具体的なポイントまで、治療を検討する方が安心して判断できるようにわかりやすく解説します。

1. ザイゴマインプラントとは？

ザイゴマインプラント（Zygoma implant）とは、従来のインプラントでは対応が難しかった「骨量が極端に少ない上顎（じょうがく）」に対して行う特別なインプラント治療です。

一般的なインプラントは、顎の骨に人工歯根を埋め込み、その上に上部構造（クラウンやブリッジ）を装着して噛む機能を回復させます。しかし、上顎の骨が大きく痩せていたり、過去の歯周病や入れ歯の長期使用で骨が薄くなっている場合、通常のインプラントでは固定が難しいケースがあります。

こうした「通常の implant が埋め込みできない環境」で活躍するのが、ザイゴマインプラントです。

ザイゴマインプラントの定義

ザイゴマインプラントとは、

「頬骨（ざいこつ＝Zygoma）に長いインプラント体を固定し、上顎全体の咬合機能を支える治療法」

のことを指します。

頬骨は非常に硬く密度が高いため、骨が痩せた方でも安定した固定が得られます。

使用される材料・技術

ザイゴマインプラントは、

• チタン製のロングインプラント（通常より2〜3倍長い）
• 専用の手術ガイドやCTによる3D診断環境
• 頬骨へ向かって斜めに埋入する特殊な技術

を用いて行います。

歯科医師の「総合的な解剖学の理解」と「高度な手術スキル」が求められる治療であり、標準的なインプラント手術とは別の専門領域です。

適応症例

ザイゴマインプラントは、次のような方に適しています。

• 上顎の骨がほとんど残っていない
• 重度の歯周病で骨が吸収している
• 入れ歯が合わず、噛めない状態が続いている
• ボーンアンカードブリッジを希望する
• 骨移植の負担を避けたい
• 通常の implant では固定できないと言われた

上記のような症例でも、頬骨を利用することで固定式の歯（上部構造）を装着できる環境が整います。

治療の流れ

ザイゴマインプラント治療は、一般的に以下のステップで進行します。

1. 精密検査（CT撮影）
   　頬骨の厚みや角度、鼻腔や上顎洞の位置を総合的に診断
2. 手術計画の立案
   　埋入位置、角度、 implantの数、上部構造の設計
3. インプラント埋入手術
   　頬骨へ向かう角度で2〜4本（片顎）を埋入
4. 即日での仮歯装着も可能
   　上部構造をその日に固定する
5. 最終的な歯の製作
   　治癒後に耐久性の高いブリッジを装着

「手術したその日のうちに歯が固定される」ことが最大の特徴のひとつです。

通常のインプラントとの違い

ザイゴマインプラントは一般的なインプラントと比較して、埋め込み位置・固定の仕組み・適応症例・治療の目的が大きく異なります。

比較項目	通常のインプラント	ザイゴマインプラント
埋入先	上顎骨（通常の歯槽骨）	頬骨（Zygoma）
インプラントの長さ	約10〜18mm	約40〜55mm
固定の安定性	骨量が十分あることが前提	硬い頬骨に固定できる
骨量が足りない場合	骨移植・骨造成などの追加の手術が必要	人工骨ではなくご自身の頬骨に埋入できる
適応症例	骨量があり通常の骨質を保っている症例	重度の骨吸収・上顎洞の拡大・入れ歯難症例
治療計画	補綴中心	上顎全体の総合的な設計（総合的環境づくり）
治療環境	一般的なインプラント手術で対応可能	高度外科手技・解剖学的理解が不可欠
技術（難易度）	標準的なインプラント技術で対応	上顎全体の総合的な設計（総合的環境づくり）

ザイゴマは高難度の外科手術

頬骨（Zygoma）は非常に硬く、骨密度が高いため、大幅な骨吸収がある患者でもしっかり固定できます。

通常のインプラント治療は多くの歯科医が習得している一般的な外科スキルで対応可能ですが、ザイゴマインプラントは通常より複雑な解剖学を扱う必要があり、3Dでの空間理解が前提となります。

そのため、必要技術は以下のように大きく異なります：

• 高度な外科技術
• 多数の症例経験
• 専門教育の受講
• 3Dシミュレーションと空間把握
• 全体の咬合機能を設計する補綴の専門性

こうしたスキルを持つ医師が限られるため、後ほど記載する名医の条件が極めて重要になります。

ザイゴマインプラント｜世界29カ国のネットワーク「ザガセンター」の認定歯科医院

2. ザイゴマインプラントのメリット

ザイゴマインプラントが世界的に高く評価されている理由は、単に「骨が少なくてもインプラントができる」という点だけではありません。

ザイゴマインプラントには、通常のインプラント治療では実現しにくい2つの大きなメリットがあります。

ひとつは 骨移植が不要であること。

そしてもうひとつは、その特性によって実現する 治療当日に歯が固定される ことです。

これらはどちらも独立したメリットではなく、「骨移植を必要としない → 初期固定が強く得られる → 即日で歯が入る」という特徴になります。

ここでは、この2つのメリットをわかりやすく順に解説していきます。

骨移植が不要で治療がシンプルになる

ザイゴマインプラントの最大の特徴は、「上顎の骨がほとんどなくても骨移植を行わずに治療ができる」という点です。

従来、上顎の骨が痩せている場合は、インプラントを固定するために次のような骨造成が必要でした。

• サイナスリフト（上顎洞挙上術）
• ソケットリフト
• ブロック骨移植
• GBR（骨再生誘導法）

これらはいずれも大きな外科処置で、治癒に数ヶ月〜1年以上かかることもあります。

なぜ骨移植なしで可能なのか？

ザイゴマインプラントは、上顎の薄い骨ではなく、硬くて厚みのある頬骨（Zygoma）にインプラントを固定する特殊構造です。

• 頬骨は骨密度が高く強固
• 骨吸収の影響を受けにくい
• 大きな初期固定を得やすい

こうした特性により、骨移植をしなくても安定した支持力を得られます。

骨移植をしないメリット

① 治療期間が圧倒的に短くなる
骨造成を行う場合、定着を待つために6〜12ヶ月以上かかることがあります。

ザイゴマ治療ではその工程が不要なため、治療開始から噛めるまでの期間を大幅に短縮できます。

② 外科処置が少なく負担が軽い
骨移植を伴う治療は、複数回の手術が必要になり、その度に腫れや痛みなど、身体的負担が大きくなりがちです。

ザイゴマインプラントでは骨移植を行わないため、手術回数が少なく、全体の負担が軽減します。

③ 複雑で長期的な治療計画が不要になる
骨移植を行うと治療工程が複雑化し、スケジュール管理も難しくなります。

どれだけ技術が優れた歯科医師の先生でも必ず骨移植が成功するとは限らず、治療期間の1〜3年と長期化のリスクがあります。その間、入れ歯を使用することになると患者さまにとっても日常生活にかかる負担は大きいものです。

ザイゴマインプラントは抜歯→インプラント埋入→仮歯（人工歯）の装着というシンプルな流れで進むため、治療全体が明確で分かりやすいというメリットがあります。

骨移植を行わないことで「即日で綺麗な歯」が実現する

ザイゴマインプラントの骨移植をしないという特徴が「当日から綺麗な歯が固定される」ことを実現します。

即日で噛める理由：強い初期固定

頬骨は非常に硬いため、インプラント体がしっかりと固定され、手術直後から高い初期安定が得られます。

この強い固定力があるからこそ、当日に固定式の人工歯（仮歯）を装着できるのです。

3. ザイゴマインプラントのデメリット

ザイゴマインプラントは、多くのメリットを持つ優れた治療法ですが、どんな医療にも必ず注意点があります。

特にザイゴマは 特殊なインプラント治療 に分類されるため、治療前に知っておくべきポイントをしっかり理解することが重要です。

以下では、治療を検討する患者さまにとって特に大切な「手術リスク」「適用外となるケース」の2つをわかりやすく解説します。

手術のリスクと注意点

ザイゴマインプラントは、通常のインプラント手術と比べて高難度であることが最大の注意点です。

① 手術の難易度が高い

ザイゴマインプラントは、頬骨に向けて長いインプラントを斜めに埋め込む特殊な手術です。

そのため、上顎洞・鼻腔・頬骨・顔面の血管・神経など、多くの重要解剖を正確に理解した上での手術計画、そして技術が求められます。

② 経験が浅い術者ではリスクが高くなる

ザイゴマが一般的なインプラントと違うのは、扱える歯科医師が限られる点です。

経験不足の術者では、

• インプラントの角度が不適切
• 初期固定が弱くなる
• 上部構造の設計が不十分
• 上顎洞や周囲組織へのダメージ

などのリスクが上がります。

③ 全身状態によっては注意が必要

ザイゴマインプラントは外科処置を伴うため、次のような方は慎重な判断が必要です。

• 心疾患・脳血管疾患などの既往
• 重度の糖尿病
• 抗凝固剤を服用している
• 骨粗鬆症治療薬（BP/DMAb）を使用中
• 手術に不安が大きい方（静脈内鎮静法などで対応可能）

安全に治療できる状態かどうか、かかりつけ医との連携がとても重要です。

4. ザイゴマインプラントの名医を選ぶポイント

ザイゴマインプラントは、通常のインプラントとは異なる高度な外科技術と精密な計画力を必要とする専門治療です。

だからこそ、“どこで治療するか”は、治療結果を左右する最も重要な要素になります。

ここでは、ザイゴマインプラントを安全に成功へ導くために、患者が必ず確認しておきたいポイントを分かりやすく解説します。

経験と実績を確認する

ザイゴマインプラントの手術は、上顎洞・頬骨・鼻腔など重要な解剖が複雑に関わるため、「経験の豊富さ」が治療結果に直結します。

特にチェックしたいのは以下の項目です。

① ザイゴマ症例の「数」と「難易度」

ザイゴマインプラントは、一般的なインプラント以上に、症例数と難症例への対応経験が重要です。

• ザイゴマインプラントの年間症例数
• これまでの累計症例数
• どの程度の骨吸収レベルの患者に対応してきたか
• 片顎／両顎どちらも経験があるか

症例数が多いほど、安全性と成功率が高くなりますのでこれらを事前に確認することが大切です。

② 専門的な教育・トレーニングを受けているか

ザイゴマインプラントは特殊インプラントに分類され、特別なトレーニングが必要です。

確認ポイント

• 国内外のザイゴマ専門トレーニングを受講している
• ZAGA Center など国際的組織の認定を持っている
• ザイゴマ領域の専門セミナーで講師を務めている

教育を受けているだけでなく、教える立場であるかどうか（例：講師・インストラクター）は高い信頼性につながります。

③ 3D診断・CT解析の質

ザイゴマインプラント成功の鍵は、術前計画（プランニング）がどれだけ正確かにかかっています。

確認ポイント

• CT解析を用いた3Dシミュレーションを実施している
• デジタル計測に基づく埋入角度の設計がある
• 術中のガイドやナビゲーションシステムを使用している

高度な分析環境が整っているほど、安全性が高いことを示しています。

④ チーム体制が整っているか

ザイゴマインプラントは高度な外科治療のため、術者ひとりではなくチーム医療体制が不可欠です。

• 麻酔科医・静脈内鎮静の管理ができる体制
• 手術専門スタッフが常駐している
• 補綴（上部構造）担当の歯科技工士と連携している
• 緊急時の対応マニュアルがある

これらは良い医師というだけではなく、良い医院としての総合力が求められる部分です。

⑤ ザイゴマの実績（症例写真・詳しい説明）が見えるか

名医の多くは、患者に分かりやすく説明するために症例写真・術前後の比較・治療計画などを積極的に公開しています。

• 症例数の多さ
• Before/After が明確
• 説明が丁寧
• デメリットも正直に語っている

こうしたポイントが揃っている医院は、治療技術だけでなく 患者への姿勢 も信頼できることが多いです。

40代男性のオールオン4ザイゴマインプラントの症例

5. まとめ：ザイゴマインプラントは「名医で選ぶ」ことが何より大切

ザイゴマインプラントは、

• 骨移植が不要でも治療が可能
• 治療当日に噛める固定式の歯が入る可能性がある

という、大きなメリットを持つ一方で、高度な外科技術と正確な診断が求められる、専門性の高いインプラント治療です。

そのため、「どの医院で、どの歯科医師から治療を受けるか」が、結果を大きく左右します。

名医を見つけるために確認したいポイント

ザイゴマインプラントの名医を選ぶ際には、次のような点を意識してみてください。

• ザイゴマインプラントの症例数や経験年数が十分にあるか
• 骨がほとんどない難症例にも対応しているか
• 国内外の専門トレーニングや研修、認定制度を受けているか
• CTや3Dシミュレーションなど、診断・計画の体制が整っているか
• 手術中の安全管理（静脈内鎮静・モニタリングなど）がしっかりしているか
• 症例紹介や患者さんの声など、情報をオープンにしているか
• メリットだけでなく、リスクや注意点も丁寧に説明してくれるか

実際にザイゴマ治療を受けた患者さんの体験談を読むと、

• 「他院でインプラントは無理と言われたが、ザイゴマで噛めるようになった」
• 「1日で固定式の歯が入り、食事と会話が本当に楽になった」
• 「カウンセリングから手術、メンテナンスまで一貫してサポートしてもらえた」

といった声が多く見られます。
これらは、技術力の高い医師と適切なチーム体制のもとで治療が行われた結果です。

情報を集め、納得したうえで一歩を踏み出す

ザイゴマインプラントは、
「もう噛めるようにはならないかもしれない」
「入れ歯しか選択肢がないと言われた」
と感じている方にとって、人生を前向きに変える可能性を持つ治療です。

一方で、誰が行っても同じ結果になる治療ではありません。

だからこそ、ホームページ、セミナーや説明会、カウンセリングなどを通して、信頼できる情報と納得できる説明をしてくれる“名医”を選ぶことがとても大切です。

「どこで治療するか」に時間をかけることは、あなたのこれからの噛む力・見た目・健康・生活の質を守るための、大切な自己投資と言えます。